空気に支配されているから決められない? ~「空気」の構造 日本人はなぜ決められないのか 池田信夫

 

 

今は若い方を中心に、特に「空気」を読むことが重要とされていると言われますが、昔から空気を読んだり、阿吽の呼吸が重視されたり、と言うことはよくある事でした。

日常生活から、企業・政治の戦略決定に至るまで、我々の文化に強く根付いているのが、この「空気」と言うやつですよね。英語にしようと思っても意外に難しいワードです。

 

image source: -Jeffrey- from GATAG

 

一方で、重要な事になればなるほど、決められない、決まらないという場面にしばしば遭遇します。かと思えば、あまり深い考えもなく、突然わけのわからない決断をしたりして驚かされることも。

 名著「決定の本質」(グレアム T アリソン 著、 宮里 政玄 訳)では、意思決定をする際の合意形成過程として、キューバ危機の事例を挙げつつ合理的・組織的・政治的な形成過程によってなされると説明しています。

が、日本の場合は「空気」の支配が強く、この合意形成過程論だけでは説明がつかない部分があります。

 

この『「空気」の構造』では、日本人の中に存在する決定を左右する「空気」と言うものを様々な視点から検証し、解説しています。

今までも「失敗の本質」(野中郁次郎等共著)などで戦略なき日本の失敗論などが論じられてきましたが、「空気」に焦点を当てたものは目新しい感じがします。

 

平等主義や強い保守傾向と言う日本人像は、農耕民族だから、と言う意見に対しても(あっさりとあっけなく)退けています。

 別に農業で文化が育ったのは日本だけじゃないし。。。まあ、確かに。

 

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この本によると、めっちゃめちゃ簡単に言えば、人類が普遍的に持っていた原始的な平等主義が、外圧が少なかった日本は生き残り、それが「空気を読む」と言う形で社会・文化として今でもはびこっている、と言うのが結論です。

 

原始的な人類の活動は小集団がベースでした。これをとにかく壊さないことが生き残るための最重要課題です。

何をするのかが目的ではありません。とにかくこの集団を生き残らせることが大事。

そうすると、もちろん権威付けはありますが、基本的に平等主義と強いリーダーが排除されるボトムアップ社会となります。

この社会が、外圧がなかったことによりかなり最近まで色濃く残っていたのが日本なのだそうです。日本がよく戦略不在に陥ってしまっている原因なのは、ここにルーツがある、と。

自律した小集団の力が強いと、国家としての統一見解よりお家(自分の村、部門、チーム)を守ることが大事とする風潮は、大きな目標を達成するために一部を犠牲にしてまでも実行する”戦略”はむしろ受け入れがたく、結果、戦略不在となります。戦略を立てることが下手な理由もここにあるそうです。

 

また強いリーダーが排除されると、最高権力者は祭り上げられるだけで、実行が伴いません。実際に実行をするのは、権力者を支える官僚・スタッフです。

最高権力者にはその立場にある、と言う意味合いの筋さえ通っていればよく、スタッフが周りを固めればそれでOKなんです。

 

そして権限の空洞化は最高権力者だけでなく、その下またその下と、どんどんおもちゃの「ぱたぱた」のように「権限」と「実行」がずれていきます。

そうすると責任と権限が、どの立場をとっても非常に曖昧になってしまいます。

 

こうして現状維持が大事で目的が無く、責任と権限が曖昧で、リーダーが不在になり、場が支配をする風潮が出来上がります。

 

確かに、こういう状況によくぶち当たります。。。

 

かつてよく大企業を中心に実行された、「権限の委譲」「強いリーダーシップ/カリスマ」「ボトムアップ」「フラット組織」と言う手段は、とったところで本質が変わらない限り、無駄だった、と言うことになります。

そもそも権限とリーダーシップは中抜きにされてしまうし、ボトムアップ社会だし、平等な社会なんです。。。

  

ではこれを打開するにはどうしたらいいのか?

 ・・・結局この本には大した結論は出てませんでした。

  

まあそりゃそうですよね、そう簡単なもんじゃないし・・・

 

でも小集団の活動が主なのであれば、小集団で責任と権限をまず明確にしていく(取らなければならない責任は小さいので受け入れやすい)と言うところから手を付けるのが、企業としてはいいのではないかと思ったりもします。

 

あ、ちなみに本としては内容がくどくて、過去の著名な研究者の引用が多く、ご本人の意見になかなかたどり着かなくって、読むにはちょっと我慢が必要です。

 

「空気」の構造: 日本人はなぜ決められないのか

「空気」の構造: 日本人はなぜ決められないのか

 

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